「今日のネクタイ、とてもお似合いですね」
そう言われて嬉しくない人はいないでしょう。私たちは日々、様々な人と言葉を交わしながら生活しています。その中で、ほんの少しの言葉選びが、相手の気持ちを明るくし、人間関係を豊かにすることがあります。
今回お伝えしたいのは、そんな「会話の魔法」とも言える「さしすせそ」というテクニックです。この言葉の力を知ることで、あなたの日常のコミュニケーションが、より温かく、より実りあるものに変わるかもしれません。
私自身、この「さしすせそ」を意識するようになってから、職場での人間関係が格段に良くなりました。朝の挨拶から始まり、会議での発言、ちょっとした雑談まで、意識して「さしすせそ」を取り入れることで、周りの反応が少しずつ変わってきたのです。
では、この「さしすせそ」とは一体何なのでしょうか？
「さしすせそ」は、会話の中で相手を褒めたり、興味を示したりする際に使われるフレーズの頭文字を並べた言葉です。特に女性が使うことで会話がスムーズに進み、男性を喜ばせる効果があるとされていますが、もちろん性別を問わず、すべての人間関係に効果を発揮します。
一つずつ、詳しく見ていきましょう。
「さ」は「さすが」の「さ」。
「さすがですね、そこに気づくとは！」「最高ですね、その考え方」など、相手の知識や行動を褒める言葉です。誰でも自分の能力や努力を認められると嬉しいものです。特に、具体的に何がさすがだったのかを伝えると、相手は自分の強みを再確認でき、さらにモチベーションが上がります。
例えば、「さすがですね、そのプレゼンの構成の仕方、とても分かりやすかったです」と言われれば、相手は次回も同じように頑張ろうという気持ちになるでしょう。
あなたも日常の中で、相手の「さすが」と思える瞬間を見逃さず、素直に伝えてみてはいかがでしょうか？
「し」は「知らなかった」の「し」。
「それ、知らなかったです！」「初めて聞きました、面白いですね」など、相手の話した情報を初めて知ったことを伝える言葉です。この「知らなかった」という一言は、相手に「教える喜び」を与えることができます。
人は自分の知識や経験を誰かに共有し、その人の役に立てたと感じると、大きな満足感を得ます。だからこそ、「へぇ、それ知らなかった！もっと詳しく教えてもらえますか？」と言われると、相手は喜んで話を続けるのです。
先日、私は職場の新入社員から「知らなかったです！そんな便利な機能があったんですね」と言われ、思わず長々と説明してしまいました。後で考えると、彼女の「知らなかった」という一言が、私のやる気を引き出したのだと気づきました。
「す」は「すごい」の「す」。
「すごいですね！」「素晴らしいアイデアですね」など、相手の才能や行動を素直に称える言葉です。「すごい」は直接的な褒め言葉なので、使い方を間違えると軽く聞こえてしまうこともありますが、心からの感嘆と共に使えば、非常に効果的です。
「すごい」という言葉の後に、具体的に何がすごいのかを付け加えると、より説得力が増します。「このレポート、すごいですね。短時間でこれだけの情報をまとめられるなんて、本当に効率的な仕事の仕方だと思います」というように。
友人と食事に行った時、彼女の服装を見て「その組み合わせ、すごくいいね！私には思いつかないな」と言ったら、とても喜んでくれました。「すごい」という言葉は、日常の小さな発見や驚きにも使えるのです。
「せ」は「センス」の「せ」。
「センスいいですね」「洗練されていますね」など、相手のセンスやスタイル、美的感覚を褒める言葉です。人は自分の選んだもの、作ったもの、表現したものに対して評価されると、特に嬉しいものです。
「そのネックレス、センスいいですね」「この資料のレイアウト、とても洗練されていますね」など、相手のこだわりや工夫を認める言葉は、思わぬところで相手の自信につながります。
私自身、オフィスの机の上に小さな観葉植物を置いていたところ、同僚から「植物の選び方と置き場所、センスいいですね」と言われたことがあります。その一言で、自分の小さな工夫が誰かに伝わったことが嬉しくて、その後も職場環境を整える楽しみが増えました。
「そ」は「そうなんだ」の「そ」。
「そうなんですね」「なるほど、そういう考え方もありますね」など、相手の話に共感や理解を示し、会話を続ける言葉です。「そうなんだ」は、相手の話を真剣に聞いていることを示す言葉であり、「あなたの話に興味があります」というサインでもあります。
「そうなんですね、それでどうなったんですか？」のように、「そうなんだ」の後に質問を続けると、相手は自分の話に興味を持ってもらえていると感じ、さらに話が広がります。
会議中、意見が対立した時に「そうですね、その視点は重要ですね」と一度相手の意見を受け止めてから自分の意見を述べることで、話し合いがスムーズに進むことがあります。「そうなんだ」は、会話の潤滑油として非常に重要な役割を果たすのです。
このように「さしすせそ」は、相手を認め、興味を示し、共感を伝える言葉の集まりです。では、これらを日常の会話で使うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか？
まず、会話が格段に盛り上がります。「さしすせそ」は、相手に褒め言葉をかけたり、共感を示したりすることで、会話にポジティブなエネルギーをもたらします。褒められた相手は嬉しくなり、さらに話したくなるものです。これにより、会話が自然と続き、互いの理解が深まっていきます。
ある飲み会で、普段あまり話さない先輩に「さすがですね、そんな専門的なことまでご存知で」と声をかけたところ、その後30分も熱く語ってくれました。その話が非常に興味深く、新たな知識を得ることができただけでなく、その先輩との距離も一気に縮まったのを感じました。
次に、相手を心から喜ばせることができます。「さしすせそ」は、相手の頑張りや才能、個性を認める言葉です。人は誰しも、自分の存在や努力が認められると嬉しいものです。特に、日本の文化では直接的な褒め言葉を交わす機会が少ないため、意識して「さしすせそ」を使うことで、相手に思いがけない喜びを与えることができます。
私のパートナーは料理が得意なのですが、「すごいね、この味付け。どうやって作ったの？」と聞くと、いつも嬉しそうに調理法を教えてくれます。そして、次の日にはさらに凝った料理を作ってくれることもあります。褒められることで、相手のやる気や創造性を引き出すことができるのです。
そして何より、コミュニケーションが驚くほどスムーズになります。「さしすせそ」は、会話のきっかけを作ったり、話を続けるための言葉です。特に初対面の人や、あまり親しくない人との会話で効果を発揮します。
就職活動中、緊張していた面接で「そうなんですね、御社ではそのような取り組みをされているんですね」と相手の話に共感を示したところ、面接官の表情が柔らかくなり、その後の会話がとてもスムーズに進みました。結果的に、その企業から内定をいただくことができたのです。
もちろん、「さしすせそ」を会話で使う際には、いくつかの注意点もあります。
まず、過剰な使用は避けましょう。「さしすせそ」を使いすぎると、お世辞や媚びに聞こえてしまうことがあります。相手の言動に対して、本当に「さすが」と思った時、本当に「知らなかった」情報を得た時など、自然な形で使うことが大切です。
また、相手の性格や状況に合わせて使い分けることも重要です。例えば、謙虚な人に対しては、直接的な「すごい」よりも、「いつも参考にさせていただいています」といった表現の方が心地よく受け取られるかもしれません。逆に、自信を持って発言する人には、「さすがですね」と素直に感心の気持ちを伝えると喜ばれることが多いでしょう。
そして、言葉だけでなく、表情や態度も大切です。「さしすせそ」を使う際は、目を見て話す、うなずく、笑顔を見せるなど、非言語コミュニケーションも合わせることで、より誠実さが伝わります。心にもないことを言っているように見えると、逆効果になることもあるので注意しましょう。
最近では、「さしすせそ」の現代版も登場しています。
例えば、「最高ですね、そのアイデア」「知らなかった、もっと教えてください」「素晴らしい取り組みですね」「洗練されていますね、そのデザイン」「尊敬します、そのような考え方」など、より具体的で現代的な表現も増えています。
これらは基本的に「さしすせそ」の延長線上にあるものですが、より状況や相手に合わせた表現になっています。大切なのは、相手を認め、関心を持っていることを伝えるという本質です。
あなたの周りにも、「さしすせそ」を自然に使いこなし、誰からも好かれる人はいませんか？そういった人は、意識してか無意識にか、相手を尊重し、関心を示す言葉を上手に使っているのです。
私の職場には、どんな人とも打ち解けるのが上手な同僚がいます。彼女の会話を注意深く観察していると、常に相手の話に「そうなんですね」と相づちを打ち、「さすがですね」と相手の知識や経験に敬意を表し、「すごいですね」と素直に感心の気持ちを表現しています。その結果、彼女の周りには常に人が集まり、情報も自然と集まってくるのです。
「さしすせそ」は決して難しいテクニックではありません。むしろ、日常の会話の中でごく自然に使える言葉ばかりです。大切なのは、相手を尊重し、真剣に話を聞き、共感する気持ちです。その気持ちがあれば、「さしすせそ」の言葉は自然と口から出てくるようになります。
ぜひ今日から、あなたの会話に「さしすせそ」を意識的に取り入れてみてください。家族との会話、友人とのおしゃべり、職場での打ち合わせ、どんな場面でも使えるはずです。
相手の話に「そうなんですね」と共感を示し、「さすがですね」と相手の知識や経験に敬意を表し、「知らなかったです」と素直に学ぶ姿勢を見せ、「すごいですね」と感心の気持ちを伝え、「センスいいですね」と相手の個性を認める。
そんな小さな言葉の積み重ねが、あなたの人間関係を豊かに、そして人生をより明るいものにしてくれるでしょう。
