今日は、結婚の現実的な側面について、率直に、そして深く掘り下げてみたいと思います。これから結婚を考えている方も、既に結婚生活を送っている方も、きっと「そうそう、これ分かる」と頷ける内容があるはずです。
まず最初に、多くの人が結婚後に最も強く実感するのが「自分一人の時間の激減」です。独身時代を思い出してみてください。平日の夜、急に友人から「今から飲みに行かない?」と誘われたとき、あなたは何の躊躇もなく「いいね、行こう!」と答えることができたでしょう。週末も、朝起きてからその日の予定を決めることができた。映画を見たくなれば映画館へ、本を読みたくなれば一日中読書に没頭することもできた。
しかし、結婚生活が始まると、この自由は一変します。まず考えなければならないのは、パートナーの予定や気持ちです。「今日は疲れているから、家でゆっくりしたい」と言われれば、あなたの外出計画は自然と後回しになります。子どもが生まれればなおさらです。急な誘いに応じることは、ほぼ不可能になります。
私の知人の男性は、この変化を「まるで別の人生を歩み始めたような感覚だった」と表現していました。彼は独身時代、毎週末のようにバンド仲間と練習やライブに参加していたのですが、結婚後は月に一度参加できれば良い方になってしまったそうです。「最初は『理解してもらえるはず』と思っていたけれど、妻にとっては『なぜ結婚したのに、まだ独身時代と同じ生活を続けたがるの?』という気持ちだったんでしょうね」
このジレンマは多くの夫婦が経験するものです。どちらが悪いというわけではありません。ただ、結婚という制度が持つ本質的な特性として、個人の自由度が制限されるという現実があるのです。
次に深刻なのが、金銭面での自由度の低下です。独身時代、あなたの収入は基本的にあなただけのものでした。もちろん、実家暮らしなら家にお金を入れることもあったでしょうが、それでも残りの大部分は自分の裁量で使うことができました。
欲しい服があれば買う。友人との旅行に誘われれば参加する。趣味の道具が必要になれば購入する。こうした「衝動的な」支出も、独身時代なら誰に文句を言われることもありませんでした。
しかし結婚すると、家計という共同体の一員になります。多くの家庭では「お小遣い制」が導入され、夫婦それぞれが決められた範囲内でのみ自由に使えるお金を持つようになります。この制度自体は家計管理として理にかなっているのですが、個人の自由という観点から見ると、確実に制約が生まれます。
ある30代女性の体験談が印象的でした。「独身時代は、好きなブランドの服を躊躇なく買えていました。でも結婚してからは、1万円を超える服を買うときも『本当に必要かな』『家計に影響しないかな』と何度も考えるようになりました。それが悪いことだとは思いませんが、やっぱり自由度は下がったなと感じます」
さらに子どもが生まれると、この制約はより厳しくなります。教育費、医療費、食費など、子どもにかかる費用は想像以上に大きく、夫婦の小遣いはさらに削減される場合が多いのです。
家事や育児の負担増加も、結婚生活の現実的な側面です。独身時代なら、自分の分だけの洗濯、自分の分だけの食事の準備で済んでいたものが、一気に倍以上になります。さらに、二人の生活習慣や清潔基準が異なる場合、調整が必要になることも少なくありません。
「夫は散らかっていても気にならないタイプだったのですが、私はきちんと片付いていないと落ち着かない性格でした。最初は『なぜ私ばかりが片付けなければならないの?』という不満が募りました」と語るのは、結婚3年目の女性です。
この問題が特に深刻になるのが、育児期間中です。赤ちゃんは24時間体制でのケアが必要で、睡眠不足や体力的な疲労は想像を絶するものがあります。夫婦で分担しようと思っても、母乳育児の場合は物理的に妻の負担が大きくなりがちです。
「子どもが生まれる前は『二人で協力すれば大丈夫』と思っていましたが、実際は想像以上に大変でした。特に最初の数ヶ月は、夜中に何度も起きなければならず、日中もずっと子どもの世話。自分の時間なんて皆無でした」と振り返るのは、現在育児中の男性です。
親戚付き合いという、これまで経験したことのない人間関係も結婚によって生まれます。配偶者の両親、兄弟姉妹、親戚との関係は、独身時代には存在しなかった新たな社会的負担となります。
特に日本の場合、冠婚葬祭への参加は社会的な義務として捉えられることが多く、これらのイベントは時間的・金銭的・精神的な負担を伴います。お中元やお歳暮、年賀状の準備、法事への参加、親戚の子どもへのお祝い金など、細かな気遣いが求められる場面は数多くあります。
「義実家に行くときは、いつも緊張してしまいます。何を話していいかわからないし、手土産選びも毎回悩みます。優しくしていただいているのはわかるのですが、やっぱり気を遣いますね」と語るのは、結婚2年目の女性です。
また、配偶者と義実家の関係が良くない場合、その板挟みになってストレスを感じることもあります。「夫と義母の関係があまり良くなくて、帰省のたびに気まずい雰囲気になります。私が間に入って話をまとめようとするのですが、どちらの気持ちもわかるだけに、とても疲れます」という声も聞かれます。
責任感の重さも、結婚生活の大きな特徴の一つです。独身時代なら、極端な話、仕事を辞めても収入がなくなっても、困るのは自分だけでした。しかし結婚すると、配偶者や子どもの生活も背負うことになります。
「家族を養わなければ」「安定した収入を維持しなければ」という責任感は、時として重いプレッシャーとなります。特に経済的な主たる稼ぎ手となる場合、その重責は計り知れません。
ある40代男性は、「転職したいと思うことがあっても、家族のことを考えると踏み切れません。独身時代なら『ダメでも自分が困るだけ』と思えたのですが、今は家族全員の生活がかかっているので、慎重にならざるを得ません」と語っています。
子どもが生まれると、この責任感はさらに重くなります。「良い父親でなければ」「子どもに良い教育を受けさせなければ」「将来のために貯金をしなければ」といったプレッシャーは、日々のストレスとなって蓄積されていきます。
しかし、ここで誤解してはいけないのは、これらのデメリットが必ずしも結婚を否定するものではないということです。多くの夫婦は、こうした困難があることを理解しつつ、それを上回るメリットや喜びを結婚生活に見出しています。
重要なのは、これらの現実を事前に理解し、パートナーと率直に話し合うことです。「こんなはずじゃなかった」という後悔を避けるためには、結婚前にお互いの期待値や価値観を明確にしておくことが不可欠です。
例えば、自由時間の問題については、「お互いの趣味や友人関係を尊重する」「月に一度は各自の時間を作る」といったルールを事前に決めておくカップルもいます。金銭面についても、「お小遣いの金額」「大きな買い物をする際の相談基準」などを結婚前に話し合っておくことで、後のトラブルを避けることができます。
家事分担についても、「どちらがどの家事を担当するか」「育児が始まったらどのように協力するか」を具体的に話し合っておくことが重要です。もちろん、実際にその状況になってみないとわからないこともありますが、基本的な考え方を共有しておくだけでも、その後の調整がスムーズになります。
親戚付き合いについては、「どの程度の頻度で実家に帰るか」「冠婚葬祭への参加方針」「義実家との距離感」などを事前に確認しておくことで、結婚後のストレスを軽減できます。
また、これらのデメリットに対処する方法も、多くの夫婦が試行錯誤の中で見つけています。例えば、自由時間の問題については、「平日の夜は家族時間、土曜日の午前中は各自の自由時間」といったメリハリをつけているカップルもいます。
金銭面では、「家計費とは別に、お互いが自由に使える『へそくり口座』を持つ」「年に一度だけは、相談なしで大きな買い物をしても良い日を作る」といった工夫をしている家庭もあります。
家事分担では、「得意な分野を分担する」「一週間交代で担当を変える」「外注できるものは思い切って外注する」といった方法で負担を軽減している夫婦もいます。
親戚付き合いについても、「配偶者の実家への対応は、その配偶者が主導する」「無理のない範囲で参加し、難しい場合は素直に断る」といったルールを設けている夫婦が多いようです。
責任感の重さについては、「完璧を求めすぎない」「困ったときは周りに助けを求める」「長期的な視点で物事を考える」といった心構えが重要だという声が多く聞かれます。
結婚を考えている人にとって大切なのは、これらのデメリットを「怖いもの」として捉えるのではなく、「乗り越えるべき課題」として認識することです。どんな人間関係にも困難はありますし、その困難を一緒に乗り越えていくことこそが、深い絆を育む原動力となるのです。
また、結婚のデメリットは人によって感じ方が大きく異なることも理解しておくべきでしょう。自由時間の減少を「寂しい時間がなくなって嬉しい」と感じる人もいれば、金銭的な制約を「無駄遣いが減って良い」と捉える人もいます。家事育児の増加を「やりがいのある仕事」と感じる人もいれば、親戚付き合いを「新たな家族が増えて嬉しい」と思う人もいるのです。
つまり、結婚のデメリットは「絶対的な悪いこと」ではなく、「価値観や優先順位によって評価が変わるもの」なのです。大切なのは、自分とパートナーがどのような価値観を持ち、何を重視するのかを明確にすることです。
現代社会では、結婚に対する価値観も多様化しています。「結婚しなければ幸せになれない」という考え方から、「自分に合った生き方を選択すれば良い」という考え方に変わってきています。だからこそ、結婚を選択する場合は、そのメリットとデメリットを冷静に評価し、納得した上で決断することが重要です。
結婚のデメリットについて語ることは、決して結婚を否定することではありません。むしろ、現実を理解した上で結婚を選択する人にとって、より充実した結婚生活を送るための準備となるのです。
「こんなはずじゃなかった」と後悔するよりも、「大変なこともあるけれど、一緒に乗り越えていこう」という気持ちでスタートする方が、きっとより良い結婚生活を築くことができるでしょう。
結婚は人生の大きな選択です。その選択をする際には、美しい面だけでなく、困難な面も含めて総合的に判断することが大切です。そして、もし結婚を選択するなら、パートナーと一緒にこれらの課題に立ち向かう覚悟と知恵を持つことが、幸せな結婚生活への第一歩となるのです。